火災保険の選び方|8つのポイントを解説!

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火災保険は、大切な住まいを守るために欠かせない保険です。火災や落雷の補償だけでなく、台風被害や豪雨による土砂崩れ、盗難や破損に対するリスクなど幅広くカバーしています。

火災保険は、マイホーム(持ち家)か賃貸かに関わらず、多くの人が契約している保険です。

しかし、全員が自分にあった保険を契約しているとは限りません。「家の購入時に住宅ローンの担当者から勧められて契約した」「必要な補償になっているかよくわからない」といった人もいるのではないでしょうか。

この記事では、これから家を購入する人、火災保険の更新に際して見直しを考えている人に向けて、最適な火災保険の選び方を紹介します。

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【1】保険の対象を決める

まずは、「保険の対象」を決めましょう。

「保険の対象」とは、保険をかける対象のことを指し、対象にすることで損害の補償を受けることができます。火災保険で「保険の対象」になるものは、「建物」と「家財」です。

例えば、建物の補償だけでは、家財の損害は補償されません。建物と家財のどちらも保険の対象にするには、それぞれに保険金額を定めて契約する必要があります。

また、保険の対象は持ち家と賃貸物件とで設定方法が異なります。

  • 持ち家の場合:建物と家財のどちらも保険の対象
  • 賃貸物件の場合:建物の保険は基本的に物件のオーナーが契約しているため、入居者は家財のみの契約が一般的

【2】建築構造を確認する

火災保険は、補償内容が同じでも、建物の耐火基準によって、保険料が異なります。

一般的に、建物は「M構造(マンション構造)」「T構造(耐火構造)」「H構造(非耐火構造)」の3つの構造に分けられます。

  • M構造…マンションやアパートなどの共同住宅かつコンクリート造、または耐火建築物の建物
  • T構造…戸建てかつコンクリート造・鉄骨造の建物。または、耐火建築物・準耐火建築物の戸建て、もしくは省令準耐火建物などが該当
  • H構造…戸建てかつT構造の条件に当てはまらない建物

耐火性は、「M構造」>「T構造」>「H構造」の順で高くなります。火災保険は、火災リスクが低いほど保険料も安くなるので、「M構造」が一番安く、「H構造」が一番高くなります。まずは、自分の住んでいる物件がどの構造なのかを確認しましょう。

⇒建物の構造級別についてさらに詳しく知りたい方はこちら

【3】補償範囲を決める

次に、補償範囲を検討しましょう。火災保険は、落雷や爆発等を含む火災による損害だけでなく、台風や強風等による風災や大雨による水災、さらに日常トラブルにおける盗難や水漏れ、破損などの損害への補償も可能です。

それぞれの補償範囲と補償内容は下記の通りです。

補償範囲補償内容
火災、落雷、破裂・爆発火災、落雷、破裂・爆発による損害
風災・雹(ひょう)災・雪災台風や突風、竜巻等による強風や雹(ひょう)、大雪や雪崩等による災害
水災台風や暴風雨等によって起きた洪水や高潮、土砂崩れなどの災害
盗難空き巣被害での盗難や、建物・家財の破損などの損害
水濡れ給排水設備の事故や他の戸室で生じた事故による損害
破損・汚損偶然起きた事故により建物や家財が破損・汚損される損害

それぞれ、以下記事で詳しく説明しています。

落雷被害は火災保険で補償される!対象のケース・保険金の請求方法
火災保険の「風災・雹(ひょう)災・雪災」補償ってなに?補償範囲はどこまで?
火災保険の水災補償ってなに?補償範囲はどこまで?
盗難による被害は火災保険で補償されるのか?
水濡れは火災保険の補償対象になる?対象になるケース・ならないケース
火災保険の破損汚損の補償とは?補償対象から必要性まで徹底解説!

ただし、補償内容を充実させることで、火災保険料は高くなります。そのため、自分にあった補償を選ぶことが大切です。

例えば、マンションの2階以上に住んでいて、近隣に川辺がなく、浸水による水災リスクが著しく低い場合は、「水災補償」が不要な可能性が高いといえます。

このように、住まいの環境に合わせて不要な補償を外すことで、保険料を節約できます。

【4】建物の保険金額を決める

続いて、建物が損壊した場合に支払われる保険金額の設定方法を説明します。

保険金額を決める際、まずは建物の価値を確認しましょう。建物の価値を評価する基準は、「新価(再調達価額)」「時価」の2つがあります。

「新価(再調達価額)」とは、損害を受けた建物や家財と同等のものを新たに建築、または購入する際に必要な金額のことです。もし建物や家財が損害を受けた場合、「新価(再調達価額)」を選択していれば、新たに同等のものを建築・購入するのに必要な保険金額が支払われます。

一方で、「時価」とは、経年による建物の価値の減少分を新価(再調達価額)から差し引いた価額のことを指します。

評価基準に「時価」を選択した場合、「新価」を設定した場合と比べて保険料は下がります。

しかし、建物や家財の現在の価値を基準にして損害額が支払われため、建物や家財が損害を受けた場合、修理費が全額補償されなかったり、以前と同等のものを新たに建築・購入する費用に保険金が満たなかったりする場合があります。

建て替えを必要とする大規模な損傷を受けた場合は、自己負担の比率が大きくなる可能性が高いと言えます。そのため、近年の火災保険では、「新価(再調達価額)」を設定することが一般的です。

⇒「新価(再調達価額)」についてさらに詳しく知りたい方はこちら

【5】家財の保険金額を決める

次に、家財の保険金額について説明します。保険の対象になる家財とは、衣類や食器、電化製品などがあてはまります。家財の保険金額は、建物の面積や家族構成などを加味して決めます。

保険金額を上げると保険料も上がるため、所有している家財を新たに買う場合いくら必要なのかを確認し、適切な保険金額を設定することをおすすめします。

⇒家財についてさらに詳しく知りたい方はこちら

【6】保険契約期間を決める

次に、保険契約期間について説明します。

保険契約期間は、1年契約から5年契約までの間で、年単位で選ぶことができます。

火災保険には長期契約割引があり、契約期間が長くなるほど保険料の割引率が大きくなります。5年契約は1年契約に比べて12%安くなります。ただし、割引率は保険会社によって異なるため、詳細は各保険会社に確認しましょう。現在住んでいる住宅を手放す予定があるといった理由がなければ、長期で契約するとよいでしょう。

また、保険料の払い込み方法によっても割引率が変わります。払い込み方法は、基本的に「月払い」「年払い」「一括払い」の3種類があり、保険料の払い込み回数が少ないほど割引率が高くなります。

最も割引率が高い方法は「一括払い」ですが、一度に払い込む保険料の負担も大きくなるため、無理のない支払い方法を選びましょう。

⇒火災保険の保険期間についてさらに詳しく知りたい方はこちら

⇒火災保険の保険期間が5年に短縮された理由を知りたい方はこちら

【7】費用保険金を検討する

火災保険には、建物や家財が損害を受けた際に支払われる保険金(損害保険金)だけでなく、費用保険金と呼ばれるものもあります。仮に火事で家が燃えてしまった場合、損害を受けた建物や家財の取り壊しが必要になったり、第三者の建物や家財に損害を与えてしまって見舞金を支払う必要が発生したりと、様々な出費が発生します。これらをまかなうのが、費用保険金です。

ここからは、費用保険金の一例を紹介します。なお、費用保険金の種類や保険金の支払額、限度額は、損害保険契約者保護機構ホームページの「別紙1 住宅用火災保険種類別・補償内容」を参考にしています。詳細な内容は保険会社によって異なるので、各保険会社に確認してください。

臨時費用保険金

火災、落雷、破裂・爆発、風災、物体飛来、水濡れ、騒じょうの損害によって保険金が支払われる際に、損害保険金×30%(※)が支払われます。例えば火事で住んでいる家が焼失した場合、家の修理費用だけでなく、引越し費用や生活必需品の購入などの費用が発生します。このような出費に使えるように、費用が支払われます。

  • ※限度額は100万円

残存物取片づけ費用保険金

火災、落雷、破裂・爆発、風災、物体飛来、水濡れ、騒じょうの損害によって保険金が支払われる際に、損害を受けた後の建物や家財の片づけにかかった費用の実費(※)が支払われます。

  • ※限度額は損害保険金×10%

失火見舞費用保険金

火災、破裂・爆発によって近隣住民の所有物に損害が生じたときに、「20万円×被災世帯数(※)」が支払われます。この保険金を用いて、近隣住民へ見舞金の支払いができます。

  • ※限度額は保険金額×20%

地震火災費用保険金

地震や噴火、これらによる津波が原因の火災で建物や家財に損害が生じた際に、「保険金額×5%(※)」が支払われます。

  • ※限度額は1事故1構内300万円。

損害防止費用

火災、落雷、破裂・爆発で損害が生じた際に、損害の防止、軽減のために支出する必要がある費用が、実費を限度に支払われます。例えば、以下の3つが挙げられます。

  • 消火活動に用いた消火薬剤等の再取得費用
  • 消火活動に使用したことにより損傷した物の修繕費用・再取得費用
  • 消火活動に緊急に投入された人員または器材にかかわる費用(人身事故に関する費用、損害賠償に要する費用または謝礼に属するものを除く)

費用保険金も、火災保険と同様に保険の対象を建物、家財で選択できます。何をどこまで補償するかはしっかり検討しましょう。

【8】地震保険を契約するか決める

地震保険とは、火災保険では補償できない地震・噴火またはこれらによる津波によって生じた損害(倒壊、火災、理没、流失)を補償する保険です。単独では契約できないため、火災保険とセットで契約する必要があります。

地震保険の補償対象と保険金額は、それぞれ以下の通りです。

  • 保険の対象:建物と家財
  • 保険金額:火災保険の支払限度額(保険金額)の30%~50%の範囲で決める
    ただし、限度額は建物が5,000万円、家財は1,000万円

地震保険の割引制度

地震保険にはいくつかの割引制度が用意されていて、保険契約期間や条件を満たすことで割引が適用されます。

保険契約期間は、地震保険も火災保険と同様に1年から最長5年で選択できます。契約期間が長いほど保険料の割引率も大きくなります。また、所定の確認資料を提出することで、免震・耐震性能に応じた「耐震等級割引」「免震建築物割引」「耐震診断割引」「建築年割引」を適用できる場合があります。ただし、重複して割引を適用することはできないため、注意しましょう。

【地震保険の割引制度】
割引の種類条件確認資料割引率
建築年割引1981年6月1日以降に新築された建物である場合・公的機関等が発行する書類(「建物登記簿謄本」、「建物登記済権利証」、「建築確認書」など)10%
耐震等級割引「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)を有している場合・品確法に基づく住宅性能評価書
・「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づく耐震性能評価書※耐震等級割引のみ
・長期優良住宅の認定申請の際に使用された品確法に基づく登録住宅性能評価機関が作成した「技術的審査適合証」(写)
・「認定通知書」など長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく認定書類(写)および「設計内容説明書」など耐震等級を確認できる書類(写)
耐震等級3は50%
耐震等級2は30%
耐震等級1は10%
免震建築物割引「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に基づく免震建築物である場合50%
耐震診断割引地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法(1981年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合・耐震診断の結果により、国土交通省の定める基準(2006年国土交通省告示第185号)に適合することを地方公共団体、建築士などが証明した書類(写)
・耐震診断または耐震改修の結果により減税措置を受けるための証明書(写)(耐震基準適合証明書、住宅耐震改修証明書、地方税法施行規則附則に基づく証明書など)
10%

地震保険の普及率

地震保険を契約している人はどれくらいいるのでしょうか。損害保険料率算出機構では、地震保険の普及度合いを示すひとつの指標である、地震保険の付帯率を公表しています。この付帯率とは、火災保険に地震保険をどの程度付帯して契約しているかを算出したものです。

2021年度の全国で火災保険契約に地震保険を付帯している割合は、69.0%で、9年前の2012年度の56.5%から12.5ポイント上昇しています(※)。

火災保険を検討する際は、地震保険も併せて検討するとよいでしょう。

まとめ

以上が火災保険の契約を検討する際に押さえておくべき基本的な事項です。ここまで検討が済んだら、保険会社から見積もりを取りましょう。しかし、多くの保険会社が火災保険を取り扱っているため、それぞれの保険会社に見積もりを申し込んで比較するのはかなり労力がかかります。

そのような場合は、「保険スクエアbang! 火災保険」のように、複数の保険会社を一度に比較できるサービスを利用するとよいでしょう。「必要な補償を決められない」「難しい保険用語を理解するのが大変」という場合は、保険のプロが無料で相談にのってくれるサービスもあります。このようなサービスをうまく活用しましょう。

住まいや家財を守るために、火災保険は重要な役割を果たします。保険料をいかに抑えるかということも大事ですが、万が一の場合にどのような補償が必要なのか、自分の住んでいる地域はどのような災害が起こりやすいのかといったこともしっかり考えて火災保険を選びましょう。