落雷被害は火災保険で補償される!対象のケース・保険金の請求方法

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落雷により建物内に過度な電流が侵入すると、家電がショートして出火したり、コンセントの埃に引火したりして、火災がおきる可能性があります。 火災には至らなくても、家電が壊れることもあります。もしも、自宅の家電がいくつも壊れてしまったら、修理費や買い替えに必要な費用は多額になるでしょう。 このような落雷による建物や家電などの家財の損害は、火災保険で補償されるのでしょうか。 この記事では、落雷による被害が火災保険に補償されるケースとされないケース、保険金請求の手順について説明します。
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落雷による被害は火災保険で補償される

落雷は、火災や破裂・爆発とともに火災保険の基本補償に含まれているため、落雷によって建物や家財が受けた被害は火災保険で補償されます。

建物に直接雷が落ちたことによる被害だけでなく、雷サージによる被害も補償されます。

雷サージとは、落雷時に瞬間的に発生する、過剰な電流のことです。雷サージは電線やアンテナ線を伝って、建物内に侵入しコンセントに伝わります。

そのため、建物に雷が直接落ちなくても、コンセントにつながっている家電に、過剰に電流が流れて故障したり、ショートをおこして発火したりする可能性があります。

火災保険では、このような直接的な落雷による被害だけではなく、間接的な被害も補償されます。

火災保険の補償対象

火災保険は、加入時に補償の対象を指定して契約します。補償対象は、「建物」「家財」「建物+家財」のいずれかです。

例えば、補償対象が「建物」のみの火災保険の場合、建物内部にある「家財」が受けた被害は補償の対象外です。

それぞれの補償例について詳しく見ていきましょう。

建物の補償例

保険の対象を「建物」にした場合、補償されるものは次の通りです。

  • 畳、床材、壁など
  • 門や塀、垣、物置、車庫などの付属建物
  • 建物に直接備え付けられている設備(キッチンや浴槽など)
  • 建物に直接備え付けられている冷暖房設備(エアコンなど)

火災保険では建物本体だけでなく、建物がある敷地内の付属物も補償の対象となります。

家財の補償例

保険の対象を「家財」にした場合、補償されるものは次の通りです。

  • 家具
  • 家電
  • 衣類
  • 日用品、食器
  • 自転車、125cc以下の原動機付自転車 など

家財とは、家具や家電、衣類などの生活に必要なもののことを指します。引越しの際に持ち運びするものと考えると良いでしょう。

火災保険の補償対象を「家財」とした場合、火災保険の対象となる建物の中にある家財が対象です。

火災保険の補償対象外になるケース

落雷によって建物や家財に損害が生じても、落雷被害から3年以上経過している場合は、火災保険の補償対象外になります。

保険金を請求する権利の期限は、保険法第95条において3年と定められています。時間が経ちすぎると、損害と落雷被害との因果関係を判断するのが難しくなるためです。よって、損害を受けてから3年以上経過すると、火災保険の請求権利を失います。

いつから起算して3年なのか?
  • 原則として、保険金の請求権利の期限は3年です。ただし、起算日については保険法に定めがありません。時効の定めは保険会社や保険商品によって異なるので、確認しましょう。なお、3年以内であれば、修理済みの損害に対しても保険金請求は可能です。

ただし、3年以上経っていても、保険金を請求できる場合もあります。保険法とは別に、保険会社がそれぞれの請求期限を個別に定めている場合もあるためです。また、災害の規模によっては、3年以上経過した損害についても、補償を受けられる措置がとられる場合もあります。

こんなときは火災保険の補償対象?対象外?

落雷によって、パソコンの中にあるデータやソフトウェアが故障してしまった場合や、給湯器が故障してしまった場合は、補償の対象となるのでしょうか。

パソコン内のデータやソフトウェアが故障した場合

デスクトップパソコン本体は「家電」にあたり、火災保険の補償対象に家財が含まれる場合は、補償の対象になります。一方、ノートパソコンは補償対象外としている保険会社も多いため、補償対象になるかは保険会社に確認しましょう。

また、パソコンに保存されていたデータやソフトウェアは火災保険の補償の対象外となります。そのため、大事なデータは日頃からバックアップを取っておくことが大切です。

パソコンの使用中に雷が鳴り始めたら、まずは必要な情報を保存してパソコンの電源を切りましょう。次に、パソコンにつながっている電源プラグを、コンセントから抜きます。

コンセントとパソコンの物理的なつながりを断つことで、雷サージからパソコンを守れるため、データやソフトウェアの故障をできる限り回避することが可能です。この方法はパソコンだけでなく、どのような家電にも有効です。

落雷により給湯器が故障した場合

建物の外に設置してある給湯器は、「家財」ではなく「建物」の補償となります。

そのため、火災保険の対象に建物が入っている場合は、保険金を受け取れる可能性が高いです。

落雷の後に給湯器からお湯が出ないなど故障が疑われる場合は、まずは電源を入れなおします。それでも動かない場合は、電源を切って給湯器の電源プラグの抜き挿しを行います。何度か電源プラグの抜き挿しを行っても直らない場合は、契約している保険会社に連絡しましょう。

落雷被害を証明する方法

自然災害による被害で火災保険の保険金を請求するときは、罹災証明書が必要です。罹災証明書とは、災害による被害の程度を認定する書面です。

通常、台風や地震などの自然災害時には、自治体に申請して罹災証明書の発行ができます。しかし落雷の場合は、ほとんどの自治体で罹災証明書を発行していません。なぜなら、落雷は他の自然災害と比べて損害の状況がわかりづらく、故障の原因が落雷によるものか、自治体では判断が難しいためです。

そこで落雷の状況を証明する方法として、気象庁で雷に関する気象証明書を発行するという方法があります。ただし、保険会社によっては気象証明書の提出ではなく、気象庁のホームページで観測記録を印刷したものでもよい場合もあるので、確認しましょう。

そのほかにも、落雷による損害を証明する書類として次のものが有効です。

  • 電力会社のホームページ等にある落雷情報・停電証明
  • 家電メーカーの修理不能証明書

家電の場合は、落雷による過電流が原因だとわかる修理不能証明書を家電メーカーで発行してもらい、提出する場合もあります。

落雷による保険会社の対応について
  • 被害状況によっては、鑑定人や代理店が現地調査する場合もあり、対応はケースバイケースです。落雷は特異な災害であり、被害状況によって保険会社の調査方法も変わってくるため、まずは保険会社に相談して確認するようにしましょう。

火災保険の保険金を請求する方法

火災保険の保険金を請求するおもな手順は、次の通りです。なお、火災保険の保険金請求は、原則として契約者本人に限られています。

  • 1. 保険会社に損害を受けたことを連絡する
  • 2. 保険金請求に必要な書類の案内が送られてくる
  • 3. 必要書類を保険会社へ提出する

まずは、加入している保険会社に、落雷によって建物や家財に損害が生じたことを連絡します。その際は、契約者名や保険証券番号を予め準備しておくと、保険会社による契約者情報や契約内容の照合がスムーズです。

次に、わかる範囲で被害にあった日時・場所・状況などを保険会社に説明します。その後、保険会社から提出に必要な書類が送られます。

火災保険の請求に必要な書類は、保険会社から送られてくるものと、自身で準備するものがあるので、何が必要なのかしっかりと確認しましょう。

例えば、保険金請求書や事故内容報告書は保険会社から送られますが、修理費の見積書、または家電を買い替えた際の領収書や、落雷があったことを証明する書類は自身での準備が必要です。

必要な書類をそろえて保険会社に提出したら、契約者の請求手続きは完了です。

保険会社は、契約者から届いた書類に基づいて、損害状況の確認・調査を行い、保険金の支払い認定や保険金額の決定をします。支払われる保険金額に対して契約者からの異議がない場合は、契約者の指定する銀行口座に保険金が支払われ、すべての手続きが完了します。

必要な書類

落雷損害による火災保険の保険金請求に必要な書類は、次の通りです。なお、加入している保険会社により必要書類は異なります。

書類の名前内容
保険金請求書保険金請求の意思と保険金の振込先などを記載する書類
事故内容報告書被害内容を記載する書類
損害明細書建物や家財の損害額を記載する書類
修理見積書・新しい家電購入時の領収書建物や家財修理にかかる見積書か、新規購入時の領収書
損害がわかる写真建物の全体像や損害箇所の写真 損害の程度が伝わる写真
落雷があったことを証明する書類気象庁の気象証明書や気象庁の観測記録など

まとめ

気象庁によると、年間に起こる落雷の多くは、7月と8月に集中しています。(※)

この時期は、台風や豪雨による浸水被害が多い時期でもあります。それまでに、火災保険の内容を見直しておくといいでしょう。

一般的な火災保険では、落雷による損害は基本補償の対象です。ただし、保険の契約内容によって、受けられる補償が異なります。

例えば、保険の対象を「建物」のみにしていて「家財」が含まれていない場合は、雷サージによる家電製品の故障は、補償の対象外になります。 落雷が原因で火災が発生すれば、建物だけではなく、中にある家具にも損害が発生します。大きな損害が発生した場合にもしっかり補償を受けられるようにするには、建物と家財の両方を補償対象にしておいたほうが安心です。

この機会に、自身の火災保険を見直してはいかがでしょうか。