火災保険は一度使うと契約は終了するのか|使用回数や保険料について解説

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火災保険の保険金が支払われるのは、損害の内容が保険金の支払い要件に該当するものであった場合です。全損でない複数回の損害を受けた場合でも、保険期間中であれば何度でも保険金が支払われます。また、火災保険金を受け取っても、次年度の保険料が高くなるといったこともありません。本記事では、火災保険を一度使うとどうなるのかについて、詳しく解説します。
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火災保険は一度使うと契約が終了することがある

自然災害などによって建物に損害が発生した場合、保険金の申請をすれば、修理代が保険金として支払われます。ただし、火災保険は、1回の支払いが保険金額の80%を超えると契約が終了するため、注意が必要です。

1回の支払いが保険金額の80%を超える全損・全焼の場合

火災保険の契約が終了するのは、全損・全焼によって1回の支払いが保険金額の80%を超えた時です。

保険金額3,000万円の建物の火災保険を契約していた場合、1回の事故で2,400万円以上の火災保険金が支払われると、その時点で火災保険の契約は終了します。たとえ5年間の契約で、契約期間が残っていたとしても、保険金額の80%以上が支払われると、「建物は全損し、なくなった」とみなされます。

地震保険も全損の場合に一度使うと契約が終了となる

地震保険も、損害調査の結果、「建物が全損している」と判断されて保険金が支払われると、その時点で契約は終了します。なお、地震保険の補償は全損となった損害が生じたときに遡って契約終了となるため、その後発生した地震などによる損害は補償されません。

また、地震保険は、単体での契約ができず、火災保険とセットで契約する保険です。

そのため、火災保険の契約が終了した場合は、セットで契約している地震保険も同時に終了してしまうので、注意しましょう。なお、地震や噴火、これらによる津波によって全損となった場合に契約が終了するのは地震保険だけです。

火災保険には契約の「失効」も存在する

保険金の支払い対象外となる事故で建物が滅失してしまった場合、火災保険の補償対象物が存在しなくなるため、契約は効力を失い、「失効」します。

失効する例は以下の通りです。

  • 地震保険を契約しておらず、地震や噴火、またはこれらによる津波で建物が全壊した場合
  • 水災補償がない火災保険を契約していた建物が、洪水によって流失した場合

そのほか、建物を譲渡すると所有利益を有する被保険者が変更されるため、契約は失効します。

ただし、契約者が建物を譲渡する前にあらかじめ書面で保険会社に申し出て承認を得ることで、保険を建物の譲受人に移転させることができます。

火災保険には「終了」と「失効」がある
  • 終了:建物が全焼などで焼失し、保険金が80%以上支払われた場合
  • 失効:火災保険の保険金支払い対象外で建物が全壊、滅失してしまった場合や、建物を譲渡した場合

火災保険の申請回数に制限はない

火災保険は、1度の支払いで保険金額の80%を超えない支払額の損害であれば、事故が発生する度に保険金の申請ができます。また、申請回数の制限もありません。

例えば、以下の火災保険を契約していたとします。

・保険期間:令和3年1月1日16:00から令和4年1月1日16:00

・建物保険金額:3,000万円

・補償内容:火災・落雷・破裂・爆発・風災・雹(ひょう)災・雪災・水災・盗難・水濡れ・建物外部からの物体飛来・騒じょう

令和3年5月に火災が発生し、300万円の保険金を受け取った後、令和3年8月に洪水で500万円の保険金を受け取ったとしても、契約が終了することはありません。

また、保険金の申請が複数回目にあたる場合、損害を受けた箇所が以前と同じ箇所かどうかは問われません。

以前損害を受けて保険金を受け取った箇所と異なる箇所が損害を受けた場合

以前に損害を受けた箇所とは異なる箇所が損害を受けた場合も、火災保険の保険金申請ができます。

例として、以下のようなケースが挙げられます。

  • 一度目の申請: 落雷によって家電がショート・発火して火災が発生し、保険金を申請
  • 二度目の申請:一度目の申請後、水濡れによって天井に破損・汚損が発生し、天井の張り替え代金を保険金として申請

あくまでも、火災保険の保険金支払いの対象になるものは、損害を受けた結果、機能に問題が生じた場合に限られます。

以前損害を受けて保険金を受け取った箇所が再度損害を受けた場合

一度申請して保険金を受け取った箇所が、後日再び被害にあった場合も、保険金の申請ができます。

例として、以下のようなケースが挙げられます。

  • 強風によって屋根に物がぶつかって破損したため火災保険を申請し、修理代を火災保険金として受け取り、修理した
  • 後日、強風で屋根の修理した箇所へ再度物がぶつかって、損害が発生した

ただし、建物の構造や立地的に、同じ箇所に損害が発生しやすい状況にある場合は、保険会社から改善を求められることもあります。対策を怠って同じ箇所を何度も損傷させているようであれば、保険契約更新時に更改できなくなる恐れがあるため、注意が必要です。

火災保険の申請が通らないケース

火災保険の申請回数に制限はありませんが、以下のようなケースでは、火災保険の申請ができません。

  • 以前保険金を受け取ったにもかかわらず、修理をしなかった箇所が再度損害を受けた場合
  • 不正受給が疑われる場合

また、地震保険も申請回数に制限はありませんが、以下の場合は申請ができません。

  • 72時間以内の地震で再び申請した場合

以下、火災保険や地震保険の申請ができないケースについて、それぞれ解説します。

以前保険金を受け取ったにもかかわらず、修理をしなかった箇所が再度損害を受けた場合

建物が損害を受けて火災保険金を受け取ったとしても、必ずしも修理に費やす必要はありません。ただし、受け取った保険金で損害箇所を修理していない場合、同じ箇所の損害に対して火災保険金の再申請はできません。

同じ箇所に保険金申請ができるのは、前回の事故で相応の修理・リフォームをした場合に限られます。

不正受給が疑われる場合

破損の原因が特定できないような不正受給が疑われる申請はできません。また、建物を故意に破損させて、自然災害を装うなどの虚偽の申請は、虚偽が発覚した際に、犯罪行為として訴訟を起こされることもあります。

72時間以内の地震で再び請求をした場合

最初に地震が発生してから72時間(3日)以内に複数回再発した場合は、「1回の地震」と見なされます。これは、「地震保険法第三条4項」という日本の法律で、以下のように定められているためです。

政府の再保険
  • 第三条
    4 七十二時間以内に生じた二以上の地震等は、一括して一回の地震等とみなす。ただし、被災地域が全く重複しない場合は、この限りでない。

したがって、最初の地震で建物が一部損となり、その24時間後に地震が再度発生して全損となった場合、一部損の分の保険金は支払われず、全損分のみの支払いとなります。

ただし、最初の地震で建物が一部損となり、その1週間後に地震が再度発生して全損となった場合は、一部損、全損それぞれの保険金が支払われます。

火災保険は何度使っても保険金額は減額されず、保険料も上昇しない

火災保険は、保険金額の80%を超えない限り、保険期間内に何度でも申請ができ、保険金額も減額されません。

火災保険は、「できる限り契約者に有利に取り扱う方が望ましい」という考え方に基づき、保険金額が復元されます。これを、「保険金額自動復元方式」と呼びます。

また、自動車保険のように、保険を使うたびに保険料が上昇するということはありません。

保険金額自動復元方式とは
  • 保険期間中に事故が起こって保険金が支払われても、保険金の支払限度額は減額されることなく、自動的に元の補償金額に復元される方式です。この方式の保険では、同一の保険期間内であれば何度保険金支払いがあっても、常に同じ条件で契約者に損害填補されます。

まとめ

火災保険は、一度の事故で保険金額の80%を超える支払いがされると、契約が終了します。しかし、保険金額80%未満の申請であれば、保険期間中、何度でも火災保険金が支払われます。

火災保険の請求方法は、決して難しいものではありません。少額の損害や同じ箇所に繰り返し発生した損害でも、まず保険会社に相談してみましょう。保険会社に火災保険金を申請する方法については、こちらの記事をご覧ください。