2022年10月に火災保険が値上げ|その理由や保険料変更の仕組みについても解説!

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火災保険料が2022年10月に値上げされます。火災保険料の目安となる参考純率が、全国平均で過去最大の10.9%分引き上げられます。この記事では、火災保険料の値上げの背景と、今回の値上げを受けての、火災保険の見直しのポイントについて解説しています。火災保険料の負担を抑える方法を探している方は、参考にしてください。
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火災保険料が値上げされる

2022年に火災保険料が値上げされ、なおかつ、割安に契約できる10年契約がなくなります。

過去にも火災保険料の値上げは実施されていますが、とりわけここ数年は短いスパンで火災保険の改定が行われています。

値上げが開始された年月変更点
2015年10月平均3.5%引き上げ
火災保険の契約期間が最長36年から10年に
2019年10月平均5.5%引き上げ
2021年1月平均4.9%引き上げ
2022年以降平均10.9%引き上げ
火災保険の契約期間が最長10年から5年に

火災保険の参考純率が過去最大引き上げ

損害保険料率算出機構は、2021年6月16日に、火災保険の参考純率を全国平均で10.9%引き上げることを発表しました。その引き上げ幅は、過去最大です。

参考純率とは、損害保険料率算出機構が算出する純保険料率のことで、各損害保険会社から収集した契約や支払いのデータと、外部データを用いて算出されます。純保険料率は、損害が起きた際に、保険会社が支払う保険金の部分の割合です。参考純率の引き上げにともない、2022年から火災保険料が値上がりする見通しです。

また、今回の改定では、火災保険の最長契約期間が10年から5年に変更されます。火災保険は、1年単位で契約するより、長期間の契約をして一括で保険料を払った方が、1年あたりの保険料は割安になる傾向があります。今回のような最長契約期間の短縮も、契約者にとっては実質的な値上げといえるでしょう。

⇒最長契約年数の短縮について詳しく知りたい方はこちら

値上げの仕組み

各損害保険会社は、損害保険料率算出機構が提供する参考純率をもとに、火災保険料を決めていきます。参考純率の引き上げが決まってから、保険会社の火災保険料に反映されるまでの流れは以下の通りです。

  • ① 損保保険料算出機構が参考純率を算出
  • ② 損害保険各社が独自に決定

また、一般的に公表される参考純率は、あくまでも全国平均の数字です。実際の改定率は、地域や建物の構造によって異なるため、値下げになる地域や建物の構造もあります。なお、保険金額が建物2,000万円、家財1,000万円で、築5年未満の住宅の場合、改定率は以下の通りです。

 
M構造T構造H構造
都道府県改定率都道府県改定率都道府県改定率
三大都市圏東京都+1.7%東京都▲0.6%東京都+3.3%
大阪府+15.3%大阪府+15.6%大阪府+24.6
愛知県+4.5%愛知県▲2.1%愛知県+3.8%
最大宮崎県+30.5%山梨県21.9%大阪府+24.6%
最小山形県▲4.7%山口県▲11.6%山口県▲13.8%

⇒建物の構造級別について詳しく知りたい方はこちら

実際に値上げが適用されるタイミング

火災保険の参考純率をもとに、各保険会社は火災保険料を算出します。そのため、実際に値上げされるタイミングは、保険会社によって異なります。

ただし、火災保険料が値上げになったとしても、今契約している火災保険の保険料が値上がりするわけではありません。仮に今回の参考純率の引き上げを受けて、2022年10月から火災保険料を値上げする損害保険会社があった場合、値上げの影響を受けるのは、2022年10月1日以降に、始期日を迎える火災保険 です。

値上げの理由は「自然災害による保険金支払の増加」

今回の火災保険料の値上げは、主に2つの理由が挙げられます。

  • 1. 自然災害リスクの増加
  • 2. リスク傾向の反映

自然災害による保険金支払いの増加

相次ぐ大規模な自然災害の発生により、火災保険金の支払額が増加していることが、保険料値上げの背景にあります。以下のように、2018年度に特に大きな保険金支払いが発生していますが、2022年以降もこれに準ずる大規模な自然災害が発生するリスクが高いと考えられています。そのため、今後も参考純率が引き上げられる可能性がないとはいえません。

【2017年~2020年に発生した風水災による支払保険金調査結果】
年度主な風水災支払保険金(火災保険)
2017年度平成29年台風18号300億
平成29年台風21号1,078億円
2018年度平成30年7月豪雨1,520億円
平成30年台風21号9,202億円
平成30年台風24号2,856億円
2019年度令和元年台風15号4,244億円
令和元年10月25日の大雨155億円
2020年度令和2年7月豪雨848億円
令和2年台風10号932億円
  • ※各年度末時点、見込み含む

出典:一般社団法人日本損害保険協会 損害保険料率算出機構

火災保険は、契約者から集めた保険料が、火災保険金の支払い額の原資となっています。保険金の支払いが今後も高い水準で続いた場合でも、保険会社の収支の均衡を保つため、参考純率の改定が行われます。

築年数の古い住宅の増加

損害保険料率算出機構の発表資料によると、築10年以上の住宅が占める割合は、2019年度時点で72.1%とされています。2015年度は65.8%で、4年間で約6ポイントも上昇しています。今後も築10年以上の古い住宅の割合は、さらに増加する見込みです。

築年数が古くなるほど、電気や給排水設備の老朽化が進み、火災・水濡れのリスクや、台風・大雪などによる損壊リスクが上昇します。このリスク傾向が参考純率に反映されているため、保険料の値上げにつながっています。

出典:一般社団法人日本損害保険協会 損害保険料率算出機構 火災保険参考純率改定のご案内(2021年6月16日適合性審査結果通知受領)

水濡れ、破損・汚損の自己負担額の引き上げ

参考純率の引き上げ、最長契約年数の短縮だけでなく、水濡れ、破損・汚損の自己負担額(免責金額)の引き上げも行われます。自己負担額とは、保険金が支払われる事故が発生した際に、契約者が自己負担しなければならない金額のことを指します。自己負担額を設定することで、保険料を抑えることが可能です。

現在は、自己負担額の最低額を0円から設定できる保険会社もあります。しかし、10月以降は水濡れ、破損・汚損の自己負担額の最低額が、5万円に引き上げられます。

自己負担額の最低額
改定前改定後
火災、落雷、破裂、爆発0円0円
風災、雹(ひょう)災、雪災0円0円
水濡れ0円50,000円
盗難0円0円
水災0円0円
破損・汚損0円50,000円

引き上げの理由は以下の2点です。

  • 1. コロナ禍で在宅勤務をする人が増えて、家財保険の少額請求が増加したため
  • 2. 家財の高性能化によって修繕費が上昇したため

これにより、契約者の負担が増える見込みです。また、一部の保険会社では風災、盗難などの損害も、自己負担額の引き上げの対象となります。

地震保険料も10月に改定

地震保険も火災保険と同様に、2022年10月1日以降に始期日を迎える地震保険が改定の影響を受けます。地震保険は、法律に基づいて政府と民間の損害保険会社が共同で運営している制度のため、今回の改定は全損害保険会社に一律に適用されます。

改定の内容は以下の2つです。

  • 1. 地震保険料の改定
  • 2. 保険期間5年の長期一括払いを選択した際の長期係数の改定

地震保険料は値下げ

今回の改定で、地震保険料が全国平均で0.7%値下げされます。値下げの理由は、耐震性の高い住宅が普及したためです。

保険料の改定は、都道府県及び建物の構造によって改定率が異なります。最大の値上げ率は+29.9%、最大の値下げ率は-47.2%です。

最大引き上げ率最大引き下げ率
イ構造(※1)+29.9%
(茨城県、埼玉県、徳島県、高知県)
▲38.1%
(大分県)
ロ構造(※2)+12.3%
(茨城県、埼玉県)
▲47.2%
(大分県)

出典:損害保険料率算出機構 2021/6/10「地震保険基準料率届出のご案内」

  • ※1 イ構造とは、耐火建築物、準耐火建築物及び省令準耐火建築物等を指します。
  • ※2 ロ構造とは、イ構造以外の建物を指します。

⇒建物の構造について詳しく知りたい方はこちら

一方、保険料に変化がない地域もあります。自分の住んでいる地域はどのような影響を受けるのかを事前に確認しておきましょう。

構造据え置き値上げ値下げ
イ構造4地域(千葉県、東京都、神奈川県、静岡県)5地域(福島県、茨城県、埼玉県、徳島県、高知県)その他38地域
ロ構造福島県2地域(茨城県、埼玉県)その他44地域

出典:損害保険料率算出機構 2021/6/10「地震保険基準料率届出のご案内」

長期係数の改定

地震保険は、火災保険同様に2年以上の長期契約時に一括払いをすると、保険期間に応じて保険料が安くなります。この時、割引のために使用する係数を「長期係数」と言います。
今回の改定では、5年契約時の長期係数が引き上げられます。そのため、割引率が縮小し、実質値上げとなります。

2022年10月改定前後の地震保険長期契約の割引率
保険期間改定前の割引率改定後の割引率
2年5%5%
3年5%5%
4年6.3%6.3%
5年7%6%

地震保険料が下がる地域でも、長期係数の引き上げにより、保険料の負担が増える場合があります。自分の住んでいる地域の地震保険料がどのように変化するかを確認したうえで、地震保険を見直すと良いでしょう。

保険料の負担を減らす方法はあるのか?

仮に保険料が値上がりして、見直しをしてもなお保険料の負担が大きい場合でも、火災保険を契約しない、または更新しないという選択肢は避けましょう。万が一の際に、惜しんだ保険料よりはるかに大きな代償を支払うことになりかねません。

ここからは、保険料の値上げに備えて、火災保険料を抑える方法を紹介します。

保険料の負担を抑えるためのポイント

保険料の負担を抑えるポイントは3点です。

  • 火災保険料の値上げ前の見直し
  • 最長契約期間の変更前に長期契約に切り替え
  • 長期年払い、長期月払いに変更

まず、今の補償内容が適切か確認しましょう。例えば、水災リスクが少ないエリアに住む方は、水災の補償をはずすと、保険料を抑えられます。ただし、近年、水災リスクは高まっています。自治体備え付けのハザードマップで、今住んでいる地域の水災リスクを確認の上、慎重に検討しましょう。

また、値上げ前に今の火災保険を解約し、割安に契約できる10年などの長期契約に切り替えることも有効です。ただし、改定後に保険料が下がる県もあるので、今の契約を途中で解約して切り替える場合と、契約を継続する場合での保険料を必ず比較しましょう。

保険料を5年分、10年分とまとめて支払うことが厳しい方は、契約期間は長期(5年間など)、支払いは1年ごと(長期年払い)、または毎月(長期月払い)とすることで、保険料を抑えることができます。

火災保険料の見直しを検討すべき人

保険料負担を抑えるために、火災保険の見直しを検討すべきケースは、火災保険の更新が近い場合です。

また、以下は保険料の値上げに関わらず、火災保険を見直した方がよいケースです。

  • 家族構成が変化した
  • 地震保険を契約していない

家族構成の変化は家財の火災保険金額の見直しのタイミングです。家族の人数が変わると、家財数も変わるためです。
近年の地震のリスクが高まっていることから、地震保険に契約したい人は、今の火災保険に追加して契約できる場合があるので、検討してみましょう。

⇒火災保険を見直す方法について詳しく知りたい方はこちら

地震保険の保険料負担を抑えるには

今回の改定による地震保険料の変化は、住んでいる地域や建物の構造によって異なります。値上げされる場合、値上げされていない場合で保険料負担の抑え方も変わってくるため、ポイントを確認しておきましょう。

地震保険契約状況値上げ予定値下げ予定
未契約改定前に5年契約をする1年などの短い契約にして、契約満了時に5年契約にする
契約済改定前に見直しして5年契約をし直す現在の契約を継続し、契約満了後に5年契約をする

値上げが予定されている地域の場合

地震保険を契約していない場合、早めの検討がおすすめです。5年の長期係数が引き上げされる前に長期契約することで、保険料の負担を抑えることができます。

すでに地震保険を契約している場合、まずは改定前に残りの契約期間や未経過保険料の返還額を確認しましょう。未経過保険料とは、年払いでの保険契約で支払った保険料のうち、その保険料に対する保険期間中の経過月数により算出した未経過部分の保険料を指します。なお、1ヵ月未満の端数は切り上げされます。

保険料の値上げ幅が小さい場合は、現在の契約を継続する方が、保険料の負担を抑えられる可能性があります。

値下げが予定されている地域の場合

これから地震保険を契約する人で、改定前の契約を検討している場合、保険期間を1年などの短期間で設定し、契約満了後に長期契約をすることで、保険料負担を抑えることができます。

契約中の場合、現在の契約を継続し、契約満了後に5年の長期契約をすると良いでしょう。

ただし、値下げ幅が小さい場合は、契約有無を問わず、改定前に5年の長期契約をすることで保険料の負担を抑えられる可能性があります。

地震保険は単体での契約ができない
  • 地震保険は火災保険とセットで入る保険です。地震、津波、噴火による火災や倒壊などの損害を補償する保険で、これらの損害は火災保険だけでは補償されません。火災保険の契約途中でも地震保険の契約はできるため、2022年10月の値上げ前に検討してみると良いでしょう。

まとめ

2022年10月から火災保険料が値上げとなります。今回の値上げは、参考純率が過去最大の引き上げとなることと、最長契約期間が10年から5年に短縮される実質的な値上げ、家財補償の自己負担額の引き上げの3つがポイントです。また、併せて、地震保険も改定されます。

災害による損失に対しての支払いが増加すれば、保険会社の収支が悪化します。そのため、今後も大きな災害が相次いで発生する場合、さらに火災保険料が値上げされることは十分に考えられます。ただし、保険料の支払いが厳しいという理由で、火災保険に入らないという選択肢は取るべきではありません。少しでも火災保険を見直す手段を多く持ち、適正な補償額や補償内容を維持しながら、保険料を抑えるように努めていきましょう。