火災保険の個人賠償責任保険(特約)とは|補償内容や契約検討のポイントを紹介!
火災保険や自動車保険の検討中に、個人賠償責任保険という特約を目にしたことはありませんか。個人賠償責任保険を契約することで、日常生活に発生し得る多くのリスクをカバーしてくれる可能性があります。
この記事では、個人賠償責任保険について詳しく解説しています。個人賠償責任保険を契約するべきか迷っている方、また、契約時の注意点を知りたい方は参考にしてください。
火災保険の個人賠償責任保険(特約)とは
火災保険の特約の一つに、個人賠償責任保険があります。個人賠償責任保険とは、日常生活で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりして、法律上の賠償責任を負ったときにかかった費用を補償するものです。火災保険自体は、自分が所有する建物や家財が、火事や自然災害などで受けた損害を補償する保険です。
個人賠償責任保険は、単体で契約することもできますが、火災保険や自動車保険、傷害保険などに特約として付加することが一般的です。
個人賠償責任保険の補償内容
個人賠償責任保険は、日常生活で法律上の賠償責任が発生したときのリスクをカバーするためのものです。しかし、個人賠償責任保険は、保険の専門家でない限り、保険金の支払要件の判断が難しいケースがほとんどです。
個人賠償責任保険は、どのような場合に補償されるのか、下記の2つに分けて具体例を解説します。
- 補償されるケース
- 補償されないケース
どのような事故が補償される可能性があるのかを、知っているだけでも役立ちます。
補償されるケース
個人賠償責任保険で補償されるケースは以下のような場合です。
(例)
- 店で買い物中、誤って店の商品を落として壊してしまった
- 飼い犬が他人に噛みついてケガをさせてしまい、治療費を請求された
- 子どもが他人の車内で嘔吐してしまい、車内の清掃代を請求された
- スーパーの駐車場でカートを他人の車にぶつけてしまい、塗装がはげてしまった
- 自分の家からの落雪によって、他人の車のボンネットをへこませてしまった
事例をみると、いろいろなケースが補償の対象となっています。
大まかにいうと、自身の親族ではない「他人」に迷惑をかけた場合、個人賠償責任保険の保険金支払い対象になる可能性があります。
なお、受託品(他人からの預かり物)の破損は対象外とするケースがほとんどでしたが、最近では補償対象に含む保険会社もあります。これに伴い、補償される可能性があるのは次のようなケースです。
- 旅行中に知人(他人)から借りたカメラを落として破損させた
- 子どもが友人から借りたゲーム機を壊してしまった
補償されないケース
個人賠償責任保険は、非常に補償範囲の広い保険ですが、以下のケースは補償対象外となります。
(例)
- 故意に起こした事故
- 業務中の事故
- 闘争行為(ケンカなど)によるケガ
- 同居の親族にケガをさせた
- 同居の親族の物を壊した
- 自動車運転中の損害賠償
自動車運転中の損害賠償は「自動車保険の対象」であり、個人賠償責任保険では補償されません。
補償される事例の中で、自動車に関連する事例をいくつか取り上げましたが、前述の事例は、自動車の運転にともなって発生した損害賠償ではないという点がポイントです。
個人賠償責任保険の補償範囲
個人賠償責任保険の補償範囲は、被保険者本人だけではありません。個人賠償責任保険は、一家に一契約あれば、同居の家族も補償の対象に含まれます。
被保険者Aさんが火災保険に個人賠償責任保険特約を付帯していた場合、以下の要件を満たしている家族は、被保険者Aさんが契約している個人賠償責任保険特約でカバーされます。
<被保険者の範囲>
- 被保険者Aさん本人
- Aさんの配偶者
- 「Aさん」または、「Aさんの配偶者」と同居している親族
- 「Aさん」または、「Aさんの配偶者」と別居している「未婚」の子ども
個人賠償責任保険の保険料はいくらなのか?
火災保険に個人賠償責任保険を付加した場合、保険料はいくらかかるのでしょうか。
個人賠償責任保険で補償を受けられる保険金額は、1,000万円、3,000万円、5,000万円、1億円、無制限など、契約内容によって異なります。
保険会社や保険金額によって保険料は異なりますが、個人賠償責任保険の保険料はおおよそ月数百円であることが多いです。
個人賠償責任保険契約検討時のポイント
保険料をおさえるために個人賠償責任保険は付帯しない、と決めてかかるのではなく、下記の3つのポイントをふまえて検討しましょう。
- 個人賠償責任保険の必要性
- 示談交渉サービス
- 自転車による事故の補償にも対応している
各ポイントについて解説します。
個人賠償責任保険の必要性
前述の保険金支払い事例を見ると、日常生活で起こり得る事故のケースが多いです。また、被保険者だけではなく、被保険者の配偶者や同居の親族なども補償範囲になるメリットもあります。
また、部屋の水を出しっぱなしにして、下に住んでいる人の家電製品や共用のエレベーターを破損させたり、子どもが起こした事故で人にケガをさせて、相手に後遺症が残ってしまったりした場合など、数千万、億単位の賠償金額がかかることがあります。
個人賠償責任保険の保険料は月数百円程度であるため、保険料と賠償責任が起こるリスクとのバランスをふまえて検討しましょう。
示談交渉サービス
保険会社によっては、個人賠償責任保険に示談交渉サービスがついているものがあります。示談交渉サービスとは、被保険者が法律上の損害賠償責任を負った場合に、保険会社が被害者や相手の保険会社と解決するまで話を進めてくれるサービスです。
個人賠償責任保険は、補償される事例も広範囲です。しかし、必ずしも補償の対象になるとは限りません。自分の判断で示談をして後日補償の対象外となった場合、賠償金は自己負担になります。
個人賠償責任保険は、保険事故の際、責任所在の判断が難しいケースが多くあります。個人賠償責任保険は示談サービスを用意している保険会社にお任せしたほうが安心です。
ただし、示談交渉サービスは被保険者と被害者の同意が必要なケースがあります。また、個人賠償責任保険の対象となる事故でなければ利用できません。
自転車による事故の補償にも対応している
個人賠償責任保険は、自転車で歩行者を死傷させてしまった場合の損害賠償金や、負担した弁護士費用なども、補償の対象に含まれます。自転車運転中の万が一の時の備えとしても、個人賠償責任保険は有効です。
令和3年10月1日時点で、34都道府県・2政令都市において自転車保険への契約の義務づける条例が制定されています(※)。また、企業に対しても、自転車通勤者に個人賠償責任保険契約の確認をすることが、努力義務として求められている場合もあります。
- ※国土交通省「自転車損害責任保険等への加入促進について」
ただし、自転車事故の場合、個人賠償責任保険で補償されるのは、相手に対しての損害賠償金や弁護士費用などに限られます。自分がケガをした場合の治療費や自分の自転車の破損に対しては、別途備えが必要な点は注意が必要です。ただし、自転車保険の中には、個人賠償責任保険と自分のケガの保険とをセットにして販売されている商品もあるので、確認しておきましょう。
個人賠償責任保険契約時の注意点
個人賠償責任保険契約時の注意点は、次の2点です。
- 重複契約に注意
- 大元の契約を解約すると解約されることに注意
各注意点について解説します。
重複契約に注意
個人賠償責任保険は、火災保険や自動車保険、クレジットカードのオプションなどでも付けられるため、重複して契約していることがあります。
先述の通り、個人賠償責任保険は、一家で一人個人賠償責任保険に契約していれば、同居の親族全員が補償対象となります。家族の各人が自動車保険や火災保険にバラバラに契約している場合は、個人賠償責任保険の重複がないよう、契約している補償内容をチェックしてみるとよいでしょう。
保険会社で複数契約していても、受け取れる保険金が増えるわけではないので、要注意です。
大元の契約を解約すると解約されることに注意
個人賠償責任保険は、単体で契約できるケースは少なく、火災保険や自動車保険の特約として付加することが一般的です。
損害保険の特約は、火災保険や自動車保険などの大元の保険を解約すると、同時に解約されます。保険の見直しの際は、火災保険や自動車保険といった大元の契約の見直しも重要ですが、解約をする場合、個人賠償責任保険の空白期間を作らないように、注意が必要です。
まとめ
個人賠償責任保険は、日常生活で法律上の賠償責任を負った場合に、かかった費用を補償する保険です。単体で契約できるケースはほとんどなく、火災保険や自動車保険などに、個人賠償責任保険特約を付加して契約することが一般的です。
個人賠償責任保険は、日常生活のさまざまなリスクに備えることのできる保険です。また、契約していれば、同居の家族も補償の対象に含まれるうえ、保険料も月数百円程度です。日常生活の万が一に備えるためにも、契約を検討してみることをおすすめします。