地震保険とは?補償内容や補償対象・必要性をわかりやすく解説
地震保険とは
地震保険とは、地震・噴火・津波によって住まいや家財が被害を受けたときに補償をしてくれる地震災害専用の保険です。
地震保険を付帯することで、火災保険では補償されない地震や津波、噴火による損害に備えられます。例えば、地震によって起きた火事は火災保険では補償されませんが、地震保険では補償されます。
地震保険は火災保険への加入が前提となる
地震保険は火災保険に付帯して契約するため、火災保険への加入が前提となります。地震保険単体で加入することはできません。
ただし、地震保険と火災保険は、“同時に”加入する必要はありません。すでに火災保険に加入していれば、後から地震保険を付帯することが可能です。
地震保険の保険料の相場
地震保険は、国と保険会社が共同運営している保険のため、同一の条件であれば保険会社によって保険料に差が出るということはありません。
保険料は、建物の構造や地域による地震発生リスクに応じて算出されます。もう少し詳しく言うと、建物構造・所在地別に定められた「基本料率」を基に、耐震性能ごとに適用される「割引率」や保険期間の長さによって異なる「長期係数」などを掛けて「基準化率」を割り出します。(式1)
この基準化率に保険金額を掛け合わせたものが、「保険料」です。(式2)
- (式1)基準化率=基本料率×割引率×長期係数
- (式2)保険料=保険金額×基準化率
基本料率
基本料率は、都道府県ごとに地震発生率が異なるため、住んでいる地域によって違いが生じます。また、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの「イ構造」か、木造などそれ以外の「ロ構造」かによっても異なります。
都道府県 | イ構造 | ロ構造 |
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北海道・青森県・岩手県・秋田県・山形県・栃木県・群馬県・新潟県・富山県・石川県・福井県・長野県・岐阜県・滋賀県・京都府・兵庫県・奈良県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県 |
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福島県 |
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宮城県・山梨県・愛知県・三重県・香川県・大分県・宮崎県・沖縄県 |
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大阪府・和歌山県・愛媛県 |
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茨城県 |
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徳島県・高知県 |
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埼玉県 |
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千葉県・東京都・神奈川県・静岡県 |
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- 参照元:2021年1月発行「地震保険基準料率のあらまし」
- ※2010年1月1日実施の構造区分の基準見直し前から継続している火災保険に付帯する地震保険のうち、見直しに伴い、イ構造からロ構造に変更になった契約は経過措置の基本科率が適用
割引制度と割引率
地震保険には、建物の免震・耐久性能に応じた4つの保険料割引制度が存在します。
- 建築年割引
- 耐震診断割引
- 耐震等級割引
- 免震建築物割引
建築年割引
建築年割引は、1981年6月1日以降に新築された建物を対象にした割引制度です。適用条件を満たすと保険料が10%割引になります。
割引率 | 10% |
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割引適用条件 |
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耐震診断割引
耐震診断割引は、地方公共団体などによる耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(1981年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合に保険料が10%割引になる制度です。
割引率 | 10% |
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割引適用条件 |
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耐震等級割引
国土交通省が定めている「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づいた耐震等級を有している場合に、保険料が割引になる制度です。保険料の割引率は、耐震等級に応じて次のように定められています。
耐震等級による割引率 | 3等級:50% 2等級:30% 1等級:10% |
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割引適用条件 |
以下のいずれかの条件を満たす建物である場合
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免震建築物割引
住宅の品質確保の促進等に関する法律に定められている「免震建築物」の基準を満たす場合、保険料が割引になる制度です。割引率は最大50%となっており、保険契約の補償の開始日によっては割引率が30%となる保険会社もあります。
割引率 | 50% |
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割引適用条件 | 住宅の品質確保の促進等に関する法律に定められている「免震建築物」の基準を満たす場合 |
長期係数
長期係数とは、保険料を一括でまとめて支払った場合に用いられる割引のことです。地震保険は2年~5年で一括払いをした場合、長期係数が適用になります。
保険期間 | 係数 |
---|---|
2年 | 1.90 |
3年 | 2.85 |
4年 | 3.75 |
5年 | 4.65 |
- 例えば、年間保険料が10,000円・保険期間が5年の場合、保険料を一括払いすると長期係数4.65を乗じた46,500円が支払う金額となります。3年一括では28,500円、4年一括では37,500円となります。
1年ごとの更新であれば、地震保険料の値上がりに即対応した保険料になってしまうため、ある程度長く保険期間を設定するとよいでしょう。
地震保険の補償内容
地震保険の補償対象となるもの・ならないもの、また支払われる保険金について解説します。
地震保険の補償対象
補償対象は居住用の建物と家財です。
「居住用の建物」とは住居部分のある建物(専用住宅や併用住宅)を指します。工場や事務所専用として使用している建物は、対象になりません。
「家財」は、物置、車庫、そのほかの付属建物を含む居住用建物に収容されている家財一式を指します。
補償対象に含まれないもの
家財すべてが地震保険の対象となるわけではありません。例えば以下のようなものは補償の対象外となります。
- 総排気量が125cc以下の原動機付自転車(自動三輪車・自動二輪車を含む)を除く自動車
- 1つあたり30万円以上の価値がある貴金属、絵画や彫刻などの美術品
- 通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手類
- 本などの原稿、設計書、図案、証書、帳簿類
- 通常、車両保険では地震・噴火・津波による車の損害は補償されません。しかし、「地震等による車両全損一時金特約」をつけておくと、地震・噴火・津波によって車に損害が発生し、全損となった場合に50万が記名被保険者に支払われます(車両保険金額が50万未満の場合は車両保険金額と同額まで)。
地震保険で支払われる保険金
補償対象となる建物または家財が、全損、大半損、小半損、または一部損のいずれかによって支払われる保険金の額が異なります。
平成28年以前保険始期 | 平成29年以降保険始期 |
---|---|
【全損 】 地震保険の保険金額の100% (時価額が限度) | 【全損 】 地震保険の保険金額の100% (時価額が限度) |
【半損 】 地震保険の保険金額の50% (時価額の50%が限度) | 【大半損】 地震保険の保険金額の60% (時価額の60%が限度) |
【小半損】 地震保険の保険金額の30% (時価額の30%が限度) | |
【一部損】 地震保険の保険金額の5% (時価額の5%が限度) | 【一部損】 地震保険の保険金額の5% (時価額の5%が限度) |
- 出典:財務省の地震保険制度の概要
財務省の「地震保険制度の概要」で定められている全損、大半損、小半損の定義は以下の通りです。
平成28年以前 保険始期 | 平成29年以降 保険始期 | 基準 |
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全損 | 全損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合 |
半損 | 大半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合 |
小半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合 | |
一部損 | 一部損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合 |
- 出典:財務省の地震保険制度の概要
平成28年以前 保険始期 | 平成29年以降 保険始期 | 基準 |
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全損 | 全損 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合 |
半損 | 大半損 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合 |
小半損 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合 | |
一部損 | 一部損 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合 |
- 出典:財務省の地震保険制度の概要
保険金の支払い対象外となるケース
地震保険に加入していても、次のようなケースでは保険金が支払われない場合があります。
- 地震による盗難または紛失より損害
- 地震発生から10日を経過した後に生じた損害
- 故意または重大な過失・法令違反による損害
- 損害の程度が一部損に至らない損害
地震保険の加入割合
損害保険料率算出機構が算出したデータによると2019年度の地震保険付帯率(火災保険契約件数のうち、地震保険を付帯している割合)は66.7%でした。2010年の48.1%から年々増加傾向にあります。
また、2019年度の世帯加入率(全体世帯に対してどれくらいの世帯が加入しているかを示した割合)は33.1%でした。こちらも2010年度の23.7%から右肩上がりに増加しています。
地震保険付帯率 | 世帯加入率 | |
---|---|---|
2019年度 | 66.7% | 33.1% |
2018年度 | 65.2% | 32.2% |
2017年度 | 63.0% | 31.2% |
2016年度 | 62.1% | 30.5% |
2015年度 | 60.2% | 29.5% |
2014年度 | 59.3% | 28.8% |
2013年度 | 58.1% | 27.9% |
2012年度 | 56.5% | 27.1% |
2011年度 | 53.7% | 26.0% |
2010年度 | 48.1% | 23.7% |
- 参照元:損害保険料率算出機構
地震保険の必要性
ここでは、地震保険に加入する必要性について考えていきましょう。
日本は世界的に地震の発生率が高い
内閣府の「平成22年度版防災白書」のよると2000~2009年にかけて全世界でマグニチュード6.0以上の地震が1,036回発生しました。そのうちの212回、約20%が日本付近で発生しています。
また、「日本損害保険協会」によると、今後30年以内に震度5弱以上の揺れに見舞われる確率は、日本のほとんどの地域で26%~100%と予測されています。地震保険は、地震の発生率が高い日本において必要性の高い保険と言えます。
生活再建支援金には限度がある
日本では地震や台風によって建物や家財が損害を受けた際に、「被災者生活再建支援制度」によって生活再建支援金を最大300万円受け取ることができます。
しかし、この額では建物を建て直したり、家財を買い揃えたりするのは難しいことが多いでしょう。地震保険を利用すると、生活再建支援金では対応しきれない範囲を補填することができます。
日本には、地震が起きないと言い切れる地域はありません。地震で自宅に被害が出ると、修復に多額の出費が必要になる可能性が高いでしょう。また、火災保険では地震が原因の火災の被害に対しては補償されないので、地震に対する備えとして地震保険に加入をしておくことをおすすめします。
地震保険料の税金控除
地震保険の保険料に対し、一定額が課税所得金額から控除される仕組みがあります。課税所得金額分から地震保険料が控除されると、所得税と住民税を軽減できます。
年間払込保険料 | 控除額 | |
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控除額 | 50,000円以下 | 保険料全額 |
50,000円超 | 50,000円 | |
住民税 | 50,000円以下 | 保険料の1/2 |
50,000円超 | 25,000円 |
地震保険の控除額は、所得税が最高50,000円、住民税が最高25,000円となります。地震保険料控除を受けるには、年末調整もしくは確定申告で申告が必要です。
保険会社から保険料控除証明が11月頃に届きます。会社員の場合は、勤務先へ提出して年末調整をしてもらいます。個人事業主などの場合は、例年2月中旬から3月中旬までに管轄の税務署で確定申告を行う際、控除申請をしましょう。
地震保険に関するQ&A
地震保険に関する質問について回答します。
Q.マンションなどの賃貸物件でも地震保険の補償対象になる?
A. 賃貸物件の「建物」に対する火災保険及び地震保険は、基本的に貸主が契約者として加入することで補償対象となります。何か被害が出た場合には、管理会社やオーナーに確認を取りましょう。
また、借りている部屋に置いている「家財」については、借主が契約者となって火災保険及び地震保険に加入することで補償対象となります。
Q.併用住宅の場合でも地震保険の補償対象になる?
A.住居部分がある併用住宅は地震保険の対象となります。ただし、業務のみに使用している事務所や店舗は対象外です。
また、併用住宅内に収容されている「商品」「什器」「業務用設備」も補償の対象外となります。
Q.建物に被害はないが「門、塀、垣」に被害があった場合は補償対象になる?
A.補償対象にはなりません。
建物の補償対象は「外壁、屋根、柱、階段」などの主要構造部のみです。
地震保険に加入して地震発生のリスクに備えよう
日本は地震の発生率が高いことや、東日本大震災・熊本地震などの大規模な地震が発生していることもあり、地震保険の加入者は2010年度から2019年度のあいだで48.1%から66.7%に増加しました。
地震保険に加入することで、火災保険だけでは補償されない、地震や地震が原因となる火災や津波の被害に対して補償が適用されます。また、地震保険には保険金の控除や、保険料割引制度もあります。
いつどこで発生するかわからない地震被害への備えとして、地震保険への加入を検討してはいかがでしょうか。